糖尿病のフットケア
糖尿病は、足に潰瘍や壊疽などの病気を起こしやすいことが知られ、
手当てが遅れた場合には下肢の切断まで至ることもあります。
これは以下の内容などの原因が重なって発症することが知られています。
- 糖尿病性の神経障害によって足の感覚が鈍くなり、胼胝(たこ)や鶏眼(うおのめ)などが気付かないうちに進行する。
- 動脈硬化によって足の血管が狭窄や閉塞(細くなることや詰まること)を起こしやすくなるため、足の先まで十分に血液が流れなくなる。
- 高血糖状態になると免疫が下がり、感染症に対する抵抗力が弱いため、爪白癬(みずむし)や足に出来た傷が治りにくく化膿しやすい。
足の異常を放置すると・・・
糖尿病で足に潰瘍ができた場合、最終的に7~20%が足を切断せざるを得なかったという統計があります。また下肢を切断した患者さんは様々な合併症をすでに持っていることが多く、その死亡率は術後1年で約30%、3年で約50%、5年で約70%にもなることが研究でわかっています。その原因は心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病が多いといわれ、このようなひとは足の血管の動脈硬化が進行した閉塞性動脈硬化症(略語でASOあるいはPAD:末梢動脈疾患とも呼ばれます)を持っている人が多いことがわかっています。
当院では足の血管の動脈硬化が簡単に判定できる脈波検査(CAVI・ABI)を導入しています。また足の血管の超音波で詳しい評価も可能です。
足の病気を起こしやすいひと
すべての糖尿病の患者さんが足の病気を起こすわけではありませんが、以下のようなひとに起こりやすいことがわかっています。
- 以前に足の病気を起こしたことのあるひと。
- 血糖値のコントロールが良くないひと。
- 人工透析を受けていたり、腎不全といわれているひと、足に動脈硬化のあるひと。
- 足にしびれや痛み、感覚が鈍いなどの神経障害のあるひと。
- 視力が低下しているひと。
これらに当てはまるひとは、下に示したような足を守る予防法を、ぜひ実行してみてください。
これらをきちんと行うことで足の病気の発症率や悪化は大きく下げることができます。
足を守るフットケア
- 毎日足をよくみる。みえにくいひとは家族にみてもらう。
- 足は指の間まで毎日洗う。
- 足を洗うときに強く擦り過ぎない。
- 肌が乾燥しやすいひとは、ひび割れを防ぐために保湿クリームを使う。
- 足に合った靴を選び、踵の高い靴は避ける。
- 毎日同じ靴を履かない。
- 爪を切るときは深爪しないようにまっすぐに切る。
- こたつや湯たんぽなどは、低温やけどの原因になりやすいためなるべく使わない。
- 出歩くときは素足ではなく靴下をはき、サンダルや下駄はなるべく使わない。
- タバコを吸うひとは禁煙する。
足の切断に至ったひとも最初は小さな靴擦れや低温やけどだったことも少なくありません。一度できた足の潰瘍はなかなか治らないことが多いため、気になるような状態であれば悪くなるまえにかかりつけの医師や看護師にすぐに伝えるようにしてください。
当院では進行した症例では、近隣の大学病院の皮膚科や形成外科、血管外科による専門的な治療を御紹介しています。