Familial Hypercholesterolemia 家族性高コレステロール血症(FH)

当院は日本動脈硬化学会認定「家族性高コレステロール血症の紹介可能な施設」です。

 

家族性高コレステロール血症とは

家族性高コレステロール血症(FH)ってどんな病気?

高コレステロール血症は、脂質異常症のうち、体内のコレステロール値が過剰となり動脈の壁に沈着して動脈硬化が進行します。
その結果、血管が細くなったり、詰まりやすくなります。

心臓の血管が詰まれば「冠動脈疾患:狭心症や心筋梗塞」を、脳の血管が詰まれば「脳梗塞」、足の血管が詰まれば「末梢動脈疾患」を起こし、 生命の危機に陥ったり、心不全、麻痺、足の切断などの重篤な合併症を残し寿命が全うすることが難しくなります。

家族性高コレステロール血症が起こる原因

そのうち食生活などの生活習慣に関係なく遺伝的な要因で起こるのがFH(Familial Hypercholesterolemia)です。
血液中のコレステロールは、肝臓にある悪玉コレステロール(LDL-C)を取り込む“LDL受容体と呼ばれる門”を通って肝臓の中に入りますが、 FHはその門が十分に機能せず、結果としてLDL-Cが長期間血液中に留まるために高くなり、どうしても動脈硬化が発生してしまいます。

このため男性では30歳以降から、女性では閉経期後などの40~50歳代など若い年齢から心筋梗塞の発症が起こり、 未治療のFHヘテロ接合体の方では非FHの方と比較して冠動脈疾患の発症リスクが約13倍高いことが報告されており1)、 無治療の場合、60%以上の方が心臓病あるいは脳卒中で死亡していることが知られています2)。

混合型インスリン2回法の作用のイメージ

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中間型+即効性インスリンの作用イメージ

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持効型+超速攻型インスリンの作用イメージ

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家族性高コレステロール血症になる確率

“遺伝性”というと、めずらしい病気と思われがちですが、重症例の「ホモ接合体:両親ともFH」、と軽症例の「ヘテロ接合体:親のどちらかがFH」のうちヘテロ接合体の患者さんは200人に1人以上の割合と推定されており3)、LDL-Cが高い患者さんの約8.5%が、FHであるという調査結果4)もあり、決してめずらしい病気ではありません。

どのような方が疑われるか

2017年に日本動脈硬化学会が発表したFHヘテロの診断基準5)は下記のようになっています。2022年に、FHを強く疑う方などを設けるなど診断の見逃しを避けるように改訂されています。

  1. 高LDL-C血症(未治療時のLDL-Cが180㎎/dl以上)
  2. 腱黄色腫(手背、肘、膝などの腱黄色腫あるいはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫
  3. FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第一近親以内の血族)

診断時の注意点

  1. 続発性高脂血症を除外した上で診断する。
  2. 2項目が当てはまる場合、FHと診断する。FH疑いの際には遺伝子検査による診断を行うことが望ましい。
  3. 早発性冠動脈疾患は男性55歳未満、女性65歳未満と定義する。
FH診断基準①

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FH診断基準②

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家族性高コレステロール血症の対処方法

家族性高コレステロール血症の危険性

黄色腫と呼ばれるからだへの脂質の蓄積に伴い出現する皮膚や腱への所見は、FHの方のなかの6~7割程度にとどまるといわれており、患者さんの自覚症状がないまま心筋梗塞を起こすことが懸念されています。

診断の重要性

FHを診断する目的は、患者さん自身が心臓病や脳卒中を起こさずに寿命を全うできるようにすることも大事ですし、その家族の方にFHの方が潜んでいないかを見つけ出すことも重要です。

家族性高コレステロール血症と診断されたら

食事療法などの生活習慣のみでは下がらないLDL-Cを下げる方法も薬物療法の選択肢も増えたことで以前よりも心筋梗塞などをきちんと予防できるレベルまでLDL-Cを下げることが可能になってきています。 コレステロールが少し高いだけで多大な心配をなさる必要はありませんが、ご自身とご家族の悪玉コレステロール(=LDL-C)値が高く、虚血性心疾患を起こされている場合には是非、ご相談ください。

引用

1) Benn M, et al. J Clin Endocrinol metab 2012; 97: 3956-3964.
2) 馬淵宏.家族性高コレステロール血症(FH). 日本臨牀.71(Suppl3),2013,170-187
3) Mabuti,H. Half a century tales of Familial Hypercholesterolemia in Japan. J Atheroscler Thromb. 24(3), 2017, 189-207
4) 多田紀夫ほか.成人病と生活習慣病 35. 2005. 1187-1197
5) Harada-Shiba, M et al. Guidelines for diagonosis and treatment of familial hypercholesterolemia 2017. J Atheloscler
Thromb. 25(8), 2018, 751-7